今月の短歌
「あかねさす」は日や紫のような美しい光の語にかかる枕詞で、だからこの歌には二度、三度裏切られる。aの音が牽引した先に現れるのは光の差し込まない暗室で、その裏切りにどきっとする間もなく、アトピーの生々しいピンク色が浮かび上がる。ああ、あかねさす、はこのピンクが虹彩を通り抜けることだったのか、という納得とともに、実は「あかねさす」をうける言葉に「君」があることも思い出させられる。匿名のまま徐々に焦点化していく歌の構造と、暗闇の淫靡さが手を取りあって結晶となったような短歌だ。
上篠翔