装飾はさみ作家 佐藤聖也

 

金属に魅入られた造形作家

金属の輝きに魅入られた装飾はさみ作家、佐藤聖也。

高校でプログラムなどを学ぶ中で「何かをしなければ」という焦燥感に駆られ、ものづくりに対する意識を高めると、卒業制作では3Dのゲームを制作。高校卒業後は北海道芸術デザイン専門学校へ進学。
幼少期から金属パーツ集めに没頭していた彼は、専門学校で木工家具、陶芸、ジュエリー制作、金属工芸と順に学んだ晩夏、1年生にして金属工芸ではさみを制作していくことを決意。

「はさみを作ってみたらそれが一番しっくりきた。この時、自分は生涯はさみを作り続けることになると確信した。」

学生にして早くも作家として生きる覚悟を持ち、金属工芸とジュエリー製作の技術を交えて新たな表現としてはさみの制作に取り組んでいった。

1作目「えんのこ」

ホルンやスチームパンクの世界観に刺激をうけ、円を基調とした幾何学形態と構造物的造形、中世的な語感から命名。制作には少なくとも100時間を要した。

 

常識を切り裂いていく装飾はさみたち

2作目は手作業での削り出しにより見事な曲線美を持つはさみを制作。進級制作となる3作目には、美しい動きとともに折畳みと展開ができる機構を持つはさみを制作した。3作目は機構設計のためにリンク機構学を一から学び、400時間余りの総制作時間のほとんどを設計に費やしたのだった。

その努力が実り、2年生からのジュエリーでの出展が通例となっている職人力展(札幌貴金属工芸組合主催)に、強い推薦を受けて1年生にして出展。ジュエリー・装身具の展覧会であるにも関わらず、装飾はさみで札幌市教育委員長賞を受賞する。この前例なき受賞の裏では「装身具でない作品が受賞してよいのか」といった議論さえ交わされた。

 

受賞作「種子のはさみ」

 

閉じているときは直線的なパーツのみで構成されており、開いてはじめて有機的なパーツが露出する。無機物に有機物が共存しているイメージで制作。

 

はさみ作家の矜持

他のステーショナリーを寄せ付けない孤高の装飾性を誇る佐藤聖也のはさみ。
しかし、彼が作るはさみの優位性は、単にその装飾によって成り立つものではない。

「装飾はさみを作っているが、装飾的なだけではだめ。はさみは切れてこそはさみ。僕は使えるはさみを作ります。」

彼の作品は圧倒的装飾性に加えて、切れ味、耐久などをとっても高級ステーショナリー並みの機能性を持つ。

「美術館に展示されているような、しかしガラスケースに閉じ込めずに、日常に存在しうる美しさを作りたい。」

佐藤聖也は金属の美しさを伝えるために、宝具の如き装飾はさみを創る。

 

「ハートの女王」

今春展示・販売開始


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