百年以上前の木から生まれ
百年以上前の職人の手を伝わり
百年以上前の暮らしで生きた漆器を
今自分の手で生まれ変わらせ
また百年後の誰かの手によって新しい命となる
古きを愛し、蘇生させる漆芸家。
瀧澤千佳は手と脚を使って作品を制作する。

明治~大正頃の緑の漆器
彼女の制作は骨董屋を探して回り、修復に最適な器を見つけるところから始まる。
「古いものの中には、現代では容易に制作できないような美しいものがたくさんある。受け継がれてきた美しいものが、古びてぼろぼろになってしまったからと言って捨てられてしまうのを、黙って見ていられない。」
昨今ヨーロッパを中心に再注目されている修復技術「金継ぎ」が瀧澤千佳の原点だった。
今では、古いものを蘇生させてくれる漆芸家として、多くの人から修復の依頼がくる。
漆の再塗装と蒔絵により蘇る器
漆が秘める、無限の可能性
湖へ行くと、彼女は流木を探して歩き始める。
脚を使って最適な素材を見つけ出して、それから初めて手作業に入る。
杖1
見つけた流木に、漆を何層も重ね掛けしていく。
「漆は9000年という遥か昔から日本にあって、伝統的なもの。しかし同時に、今でも人々の生活に密着していて馴染み深く、制作をするうえで現代的な表現も可能。」
和紙に漆を施した作品「宇宙」
瀧澤は漆の可能性を信じ、素材としてのサステナビリティにも注目している。
「無駄に自然を殺さない、塵を出さないで活動していきたい。漆は古くから日本人にとって身近だった、持続可能性を秘めた自然の塗料。作品制作などの活動を通して、漆という素材の可能性に再び注目してもらいたい。」
SDGs達成のために様々な取り組みが行われるようになった現代において、漆はその需要と価値をますます高めていくだろう。